ミクロレベルで印影を照合可能、大日堂の印鑑照合機「チェック印」とは？

 

名古屋に本社を構える（株）大日堂が、偽造印犯罪の防止に繋がる印鑑照合機「チェック印」の開発に成功し、販売をスタートしました。この商品は、パソコンにＵＳＢ接続した高精度カメラで２つの印影を読み込むだけで、専用開発のソフトウエアがその違いを瞬時に照合するというものです。

（株）大日堂は印章、文具業界に商材を卸す印章商社です。単に商材を卸すだけでなく、社内で木口、ゴム印、浸透印が量産できるシステムを持っていて、下請け製造もこなせます。

また、消費者のニーズや社会情勢を読み取って、新たなオリジナル商品も生み出してきました。最も有名なのが、アルミニウムの印材とスーツケース型の印章ケースを組み合わせた「アルミネ」。スタイリッシュで高級感ある印章セットとして、金属印ブームを牽引した。他にも、慶弔スタンプセット、カード型印鑑「うすいん・うすはん」、ゴルフボールネーム印「ナイスオン」、印材の上下を分かりやすくする「はんこ目印シール」などの商品を独自開発してきました。

それらの多くは同社の浅山和好社長の発想で生まれたものですが、20年前からずっと「偽造印犯罪の防止に繋がる『印鑑照合機』を作れないだろうか……」と考えてきたそうです。

アナログな印影照合では犯罪は防げない

法務局などの役所や銀行では、今も熟練の行員が２つの印鑑を目視で比較するやり方がほとんどです（編集注：一部の銀行では印鑑照合機が導入されています）。そういった現状を見聞きしてきた浅山社長は危機感を抱いてきました。

「印影をスキャナーで読み込みコンピュータ式彫刻機で彫れば簡単に同型印を作ることができる。そんなデジタル偽造の時代に、チェックする側は未だにアナログ方式。これでは犯罪を防げません。現に偽造印による印章犯罪は今も絶えることがない。そしてそれが『印章はセキュリティ能力が低い』『ハンコでは犯罪が防げない』という印章不要論に繋がっていってるように思うのです。だから印章業界側から積極的に偽造印犯罪を防ぐシステムを世に出す必要がある」。

それをどこもやらないならと、浅山社長が開発したのがデジタル印鑑照合機「チェック印」です。操作も簡単で、カメラレンズの下に印影をひとつずつ置いて、読み取りをおこなうだけ。印影の上下や２つの印影の重なり具合は機械が自動でおこなう。相違点は色分けされて表示され、一致評価が％で計算されるので同じ印鑑か偽造された物かが一目瞭然で分かります。

この「チェック印」が普及すれば、偽造印犯罪などのトラブルが未然に防げると共に、その存在が社会に知られることによる抑止効果も期待できます。カギが２つある家を空き巣が敬遠するように、犯罪者が印章偽造を避けるようになる抑止効果につながります。

そして、「ひいてはそれが印章への信頼性向上、印章の利用機会拡大に繋がる可能性もある。そこで印章業者の皆さんには、銀行、役所をはじめ、保険、不動産、建築業界など印鑑による契約機会が多い業界へチェック印を販売して貰いたい」（浅山社長）。

印章店の店頭に置いてデモンストレーションするだけでも、印章のセキュリティ性のアピールになるでしょう。肉眼では判別できないそっくりな同型印を並べて、そのミクロレベルの違いを来店客に見せれば印章が時代遅れな認証ツールではないことが伝わるはずです。また、昔の通帳に捺された印鑑がどれか分からなくなったといったトラブルを解決するためのアイテムとして、店頭に置いても良いでしょう。さながら、眼鏡店の超音波洗浄機のように、無料の印影照合サービスをおこなえば販売促進に繋がる可能性もありまる。

「ちゃんとした印章を作らなければ」という意識を作る

いずれにしても、「このシステムをより多くの人の目に触れさせることで、印章はまだまだ時代遅れではない、デジタル技術を組み合わせることで高いセキュリティ能力があることが伝わると思う。それによって偽造印犯罪を防ぐと共に、消費者にも『ちゃんとした印章を作らなければならない』という意識が芽生えると思うのです」（浅山社長）。既製印のお客を別注に変えるのにも有効でしょう。

チェック印の価格は20万円（カメラ本体と専用ソフトを含む・税別）。銀行や役所で大量購入してくれれば大きな売上げと共に印章制度の存続にも繋がります。

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