2016.01.05

オリジナルTシャツを産み出すウエアプリントの7つの製法とは1~シルクスクリーン印刷、熱圧着、トナー転写

ウエアプリントには様々な製法が存在します。生地の素材によってはプリントできるもの、できないものがあるので、1つの製法だけでなく、複数のプリントシステムを所有しているショップがほとんどです。現在のウエアプリント業界で一般的に利用されている製法は次の7つです。
1、シルクスクリーン印刷
2、熱圧着
3、トナー転写
4、インクジェット転写
5、昇華転写
6、ダイレクトインクジェットプリント
7、刺繍
それでは、各製法の特徴を紹介していきましょう。

大量印刷に強く汎用性の高さが魅力のシルクスクリーン印刷

1、シルクスクリーン印刷
昔ながらのウエアプリント方法ですが、最も汎用性があり、多くのショップや工場で採用されている手法でもあります。
最大の特徴は、インクと版を変えることで様々なボディ(プリントされる前のTシャツ)に対応できること。綿、ポリエステル、ナイロンなど、ウエアプリントの代表的な素材は全てシルクスクリーン印刷で対応できます。また、特色インクを使うことでベタ表現などがキレイに出せます。他にもラメ、箔、蓄光、熱で膨らむ発泡インクなど様々な表現が可能。一刷り分のインク代は高く見積もって20〜30円。刷り工程も1分とかからりません。インクコストが安くて印刷工程がスピーディーなので、大量生産に最も適している製法と言えるでしょう。

シルクスクリーン印刷には1色ごとに版が必要になります。この版を作るには大がかりな設備が必要なので、小規模ショップでは版を外注し、印刷工程を自店でおこなうというパターンが多いようです。版の外注価格は1版につき約6000~8000円が相場。これが印刷価格に転嫁されるため、小ロット注文になるほど価格が高くなります。ある程度納期もかかるので、急ぎ注文には対応しづらいのが難点です。ハイレベルなシルクスクリーン印刷業者は写真分解製版や多色刷りも難なくこなしてくれるが、素人には難しい作業だろう。製版、印刷共に技術が要求される手法です。
最近では手軽に製版できるデジタルスクリーン製版機が各社から登場。パソコンからオンデマンドで版を出力でき、水洗いなどの必要もないので、小型ショップでも扱うことができるようになりました。

シルクスクリーン印刷

シルクスクリーン印刷はスキージーを使ってインクを落とすようにプリントする。

ユニフォームの背番号などで定番の熱圧着

2、熱圧着
最も低投資で導入できる製法と言えるでしょう。背番号やマークなど、スポーツウエアで多用されている。シート転写、ラバー圧着と呼ばれることもあります。

熱圧着の最大の武器は、小ロット多品種の注文に即時対応できること。シルク印刷と違って版が必要ないため、連番の背番号でも簡単に対応できます。

熱圧着で使用するのは「ラバーシート」と「カッティングクロス」の2種類。ラバーシートは色が付いた薄いシートで、赤、黒などの単色がほとんど。熱プレスすると糊が溶け、ボディに貼りつきます。多色注文がくると色数分のシートが必要になります。カッティングクロスはフロッキーやサテン、ニットなどの生地で、背番号やスポーツマークなどに多用されているシートです。刺繍と組み合わせて使うこともあります。切り口のほつれを防ぐため、ヒートカッターやレーザー加工機で切る場合が多いようです。ラバーシート、カッティングクロス共に昇華転写やインクジェットプリントしてからボディに熱圧着するタイプもあり、その場合はフルカラー表現が可能になります。撥水用、濃色ポリエステル用の再昇華防止など、それぞれの生地に対応したシートが用意されています。

製法上、必ず「カス取り」が必要で、デザインが複雑になるほど「カス取り」に時間がかかるのが難点。小ロット単色の文字デザインのみの注文は熱圧着で、フルカラー注文はトナー、インクジェット転写やガーメントプリンターで、大量注文はシルク印刷で、と他の製法と併用するショップが多いようです。

熱圧着

熱圧着につきもののカス取り。

フルカラーで1枚から気軽にプリントできるトナー転写

3、トナー転写
こちらも低投資ではじめられる製法。ウエアプリントのエントリーとして導入するショップが多いようです。カラープリンターやパソコンの普及で急速に進化した製法で、今後も様々な商品の登場が期待できます。

特徴はフルカラー表現が1枚から簡単にできること。転写紙にレーザー(トナー)プリンターで出力してカス取り、熱プレスするだけなので、枚数に関係なく、どんなデザインでも対応できます。

トナー転写の性能は転写紙の質に左右されると言ってもいいでしょう。洗濯堅牢度や耐擦過性など、転写紙の種類やメーカーによって大きな違いがあるので、導入前にはしっかりとしたリサーチが必要です。メーカーによってはカス取り工程が不要で絵柄だけを転写できる特殊な転写紙が用意されています。ラバーシートと同様に、撥水生地用、濃色ポリエステル用の再昇華防止など、生地に対応した転写紙があります。

ウエアプリントできるサイズがプリンターの出力サイズに限られるため、大きくてもA3ノビ程度まで。また、大きな面積に転写する場合、転写紙の性能によってボディの通気性が悪くなることもあります。

単色注文の場合、トナー転写ではコスト的に無駄が多いので、熱圧着と併用するのがセオリーです。すでにレーザープリンターを持っていても、トナー転写用に流用できない場合が多いため、ほとんどのメーカーはトナー転写専用のプリンターの導入を勧めています。

トナー転写

トナー転写の様子。プリント後、カッティングプロッターで絵柄の周りをカットしている。

ウエアプリントについて詳しく知りたい方は、

OGBSマガジンVol.17「クラT攻略法」
OGBSマガジンVol.19「シルク印刷VS熱圧着」
OGBSマガジンVol25「ボディ徹底解剖」
OGBSマガジンVol.29「ウエアプリントの新常識」
OGBSマガジンVol.34「ウエアプリント33の最先端を大公開」
OGBSマガジンVol.36「おさえておきたいウエアプリント」
をご覧ください。

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