2017.08.18

印影の読み方を教えてくれる印章アドバイザーってなに?

印章アドバイザーって?
みなさん、自分の印章の文字を読めますか?
注文する時に「自分の名前で彫るように頼んだから読めなくて大丈夫」と思っている方は気を付けてください。実は「印影が判読できない印章」は印鑑登録ができません。
印章の文字にはさまざまな書体が使われています。中には文字が崩れ過ぎて、役所の担当者では判読が難しい書体もあります。そんな時、役所が助けを求めるのが、文字の判読を手助けする専門家「印章アドバイザー」です。

難解な印影が集まる印鑑登録の窓口

印鑑登録制度は各市区町村の条例によって登録できる印章が定められています。そのため、自治体ごとに細部は異なりますが、どの自治体にも共通している項目の1つが「住民基本台帳に登録されている氏名と同じ印影を登録しなければならない」ということ。つまり本名が「田中」なのに「山田」と彫られた印章を登録することはできません。そこで窓口の担当者が、申請者名と持ち込まれた印影の氏名が同じものかを確認した上で登録をおこなっています。しかし、窓口には複雑な書体で彫られた印章や祖父から譲り受けたという古い文字の印章など、判読が難しい印章が持ち込まれることがあります。

そこで登場するのが「印章アドバイザー」です。窓口の担当者が判読に困った場合、あらかじめ「印章アドバイザー」として印章組合から委嘱された印章店に電話やFAXで助言を求めます。印章アドバイザーは登録の可否を決めるのではなく、あくまで文字の判読をおこなうだけ。窓口の担当者がアドバイザーの判読結果を聞いて、登録の是非を判断します。

区役所からの要望で生まれた印章アドバイザー制度

この制度ができたのは役所が印章組合に持ちかけた相談がきっかけでした。1993年の秋、東京印章協同組合に台東区役所の戸籍課から、「印鑑登録申請時に判読できない印影があり、従来は近所の印章店に教えてもらっていた。しかし、それが間違ったものであった場合に申請した区民にどう説明して断わればいいか困っている。しかるべき団体のしかるべき技術者が判別した結果という形にしたい」と相談がありました。
難読文字に印章アドバイザー

それを受けて同組合は台東区だけでなく都内の他の役所に対しても、印章組合が役所にアドバイスできるシステムの検討が始めました。そして翌年の1994年2月には「印章アドバイザー制度」の設立に向けて正式に活動を開始。制度の設立後は、都内だけでなく全国各地から判読の依頼が東京印章協同組合に持ち込まれるようになりました。
1999年には当時の㈳全日本印章業協会の総会で印章アドバイザー制度を全国へ普及させていく方針が発表しました。その後、同協会が2012年に公益社団法人の認定を受けた後も制度が引き継がれ、平成27年度末の時点で126名の印章アドバイザーが全国で活躍しています。

印章アドバイザーってどんな人達?

この印章アドバイザーに任命されるには原則的に役所の所轄地域内の組合員で、印章業の経営に15年以上携わり、資格取得から3年以上経過している1級印章彫刻技能士であること(2級印章彫刻技能士の場合は資格を取得してから10年以上)と定められています。報酬は受け取らず、ボランティアでおこなっています。

判別方法は地域ごとによって異なり、1人の印章アドバイザーが判断して役所に回答する地域もあれば複数のアドバイザーが協議する方式の地域もあります。
複数のアドバイザーで協議する方式では、まず役所から各アドバイザーへFAXを一斉送信します。その後、リーダー格のアドバイザーが結果を集約して役所に回答します。早ければ約5分で回答する地域もあるそうです。
1人で判断する方式では、印影を一読して直ぐに返信することもあります。もし、1人で判断できないケースは、他の印章アドバイザーに連絡して力を貸してもらう地域もあるそうです。
どちらの方式でも重視されているのはスピード。印鑑登録の申請者は判読をおこなっている間は、役所の窓口で待っています。印章アドバイザーも可能な限り迅速に返答するように心がけているそうです。しかし、古い書籍などを用いて厳密に調べなければならないケースでは20~30分かかることもあります。

複数か1人か、方式が違うのは役所の要望によるものです。例え、ある地域の組合が複数のアドバイザーが協議する方法を提案したところ、役所から「プライバシーの侵害になるから困る」と言われ、名簿順に1人のアドバイザーが問い合わせを受ける方式になりました。他にも、外部に個人情報を漏らさないという趣旨の誓約書の提出を印章組合に求めている自治体もあります。
役所側が懸念したのは個人情報の取り扱いだけではありません。都内のある区役所は「絶対に商売には利用しないで欲しい」とをしたためた文書を印章組合に渡したそうです。アドバイザーになれば役所への納品に有利になるという誤解やお店の販促に利用されることを懸念したのではないかと言われています。

ハンコ&スタンプに関連する記事

2021年7月13日
ハンコ&スタンプ 婚姻届のハンコがなくなる? 法務省がコメントを募集中
2020年4月1日
ハンコ&スタンプ 人気の文具展『書く・貼る・捺す・デジる展』が中止
2020年3月20日
ハンコ&スタンプ 当社の編集長がマツコの知らない世界に出演します!
2020年3月14日
ハンコ&スタンプ 歴代天皇のお墓のハンコ「御陵印」を正しく取材しました~武蔵陵墓地編~
2020年3月12日
ハンコ&スタンプ ハンコ=NOルール!戦国武将達もハンコを楽しんでいた
2020年3月11日
ハンコ&スタンプ 人気のチタン印「ブラストチタン」とチタン印の彫り方2選
2020年3月11日
ハンコ&スタンプ 見逃せないご祝儀袋用の印鑑「慶弔印」の需要
2020年2月28日
ハンコ&スタンプ 歴代天皇のお墓のハンコ「御陵印」を正しく取材しました~孝明天皇陵編~
2020年2月26日
ハンコ&スタンプ 歴代天皇のお墓のハンコ「御陵印」を正しく取材しました~神武天皇陵編~
2019年8月29日
ハンコ&スタンプ 歴代天皇のお墓のハンコ「御陵印」を正しく取材しました~應神天皇陵編~