2018.01.23

政府が「法人設立時の印鑑届出の廃止」を計画

安倍首相も国会で「法人登記をオンライン化する」と演説

日本政府は1月16日、行政の電子化拡大を目指す「eガバメント閣僚会議」において「デジタル・ガバメント実行計画」を決定した。計画には、「法人設立時の印鑑届出義務の廃止」や「政府手続きにおける押印の見直し」など、印章に関する各種制度を大幅に見直す内容が盛り込まれている。1月22日に安倍首相がおこなった施政方針演説でも「行政の生産性向上」の施策として
「法人の設立登記は、オンラインで24時間以内に完了するようにする。あらゆる電子申請において添付書類ゼロを実現する」。と明言しており、安倍政権として法人登記オンライン化を明確にした。

 

法人印登録をやめて世界最高水準の起業環境を

今回、政府が決定した「デジタル・ガバメント実行計画」(以下、DG計画)は、過去に政府がおこなってきた「電子行政」「電子政府」といった取り組みを、さらに加速させるものだ。従来おこなってきた電子行政の取り組みのように、「デジタルで可能な手続きはできるだけデジタルでやろう」という考えから大きく踏み込んで、「そもそも行政手続きはデジタルでやる。逆に出来ないものがあれば何とかしよう」で取り組む積極的なものだ。

目指しているのは、「利用者にスピーディーで簡単な行政サービスを提供すると共に、国民や事業者の情報を行政が連携して利用できる体制にする」こと。そのために、行政のあらゆるサービスが最初から最後までデジタルで完結される=行政サービスの100%デジタル化を計画書内で明言している。
それを実現するために様々な具体的施策が挙げられているが、それらをまとめて言えば「ネットを使ってペーパーレスにする」ということ。そして、その障壁として「押印」という単語が計画の随所に登場する。
特に、注目すべきは「法人設立手続のオンライン・ワンストップ化、法人登記情報連携の推進」という施策の中で挙げられている「法人設立時の印鑑届出義務の廃止」である。政府としては、法人設立がオンラインでスピーディーに出来るようにして起業を活性化したいと考えている。目標は首相が述べたとおり「オンラインで24時間以内の完了」。計画書ではそれを、
「世界最高水準の起業環境を目指す」と言う。また、各行政機関との間での手続きをデジタル化するためにも、
「登記事項証明書の添付省略も実現する」。そのために、法人設立時の印鑑届出を無くしたいという意図である。
また「政府手続きにおける押印による本人確認の見直し」も計画書に盛り込まれている。これは、デジタルガバメントのシステムを整備する上で邪魔になるという考えだ。曰く、
「政府における各種手続では本人確認に押印を求める場合が多く、オンライン化に当たっての課題となっている。押印に関しては、技術の進展による偽造容易性も踏まえ、各手続における本人確認等の手法としての必要性を再確認するとともに、押印などによる本人確認が求められる場合には、原則、電子的な確認手法への移行を目指すとともに、利便性と安全性をバランスした解を見出すことが必要である」。
押印に代わる方法としては、マイナンバーカード等を用いた電子署名、同カードに搭載された公的個人認証、同カードと電子委任状などが検討されている。
それ以外にも、ペーパーレス化の阻害となる添付書類(住民票や戸籍謄写本など)の撤廃や、現在普及が伸び悩んでいる自動車保有関係手続き(新車登録など)のワンストップサービスの拡大などがを計画。それらの書類を取得する際の押印機会も同時に失われるだろう。

 

民間同士にも書面なし促す
「押印を求める社会慣習などによって、デジタル化が進んでいない」

もちろん、これらは行政における押印廃止であり、日本の印章制度、印章文化は民間の商習慣としてもしっかり根付いている。例えば、請求書に捺す角印や、社内回覧の認印。これらは、国が義務づけした「制度」ではない。
しかし、DG計画ではそれら民間の押印にも口を出すことを示唆している。なぜなら、政府がどれだけ電子化を進めようとしても、民間の押印や添付書類が阻害する。そこで、全府省を挙げて「民―民手続におけるオンライン化の推進」に取り組むという。
「民―民手続のうち、法令上、オンライン手続が認められていないものが存在する。内閣官房は、2017年度末までにそのような手続について、オンライン手続を認めていない阻害要因とともに取りまとめ、公表する。(中略)一方、民―民手続のうち、法令上、オンライン手続が認められている場合においても、押印を求める社会慣習などによって、デジタル化が進んでいない場面もある。このため、内閣官房は、2017年度末までを目途に、先端技術を活用して書面・対面なしで取引を完結させている事例集を取りまとめ、民間事業者の取組を促す」。
これまでも行政による押印廃止問題は何度も噴出してきたが、今回のDG計画は民間の押印も省略するよう働きかけ、国全体としてペーパーレスへ、オンラインへとさらにアクセルを踏み込む計画のようだ。
計画書によると、法人印届出の義務廃止の成案と、押印見直し方針の整理については、2017年度末(今年3月末)までにおこなうとしている。
……次号[2018年2月号]の現代印章でも詳しく記事にします。

ニュースに関連する記事

2024年1月15日
ニュース 能登半島地震における武藤工業(株)の対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震におけるOGBS関連メーカーの対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震における理想科学工業(株)の対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震におけるエプソン販売(株)の対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震におけるローランド ディー.ジー.(株)の対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震における(株)ミマキエンジニアリングの対応と取り組みについて
2024年1月12日
ニュース 能登半島地震におけるコムネット(株)の対応と取り組みについて
2023年12月20日
ニュース 今年のハンコ「歳の印」は八冠達成の藤井聡太さん
2021年7月13日
ニュース 婚姻届のハンコがなくなる? 法務省がコメントを募集中
2021年1月12日
ニュース 印刷機材展『page 2021』のリアル展が中止