ハンコ＝ＮＯルール！戦国武将達もハンコを楽しんでいた

織田信長の印鑑は「織田信長」じゃない!?

町のハンコ屋さんに行くと、「徳川家康」と彫られた仕上がり見本の印鑑が置かれていることがあります。
でも、実際の家康はフルネームの名前が入ったハンコを使っていなかったって、知っていますか？
実は、家康だけでなく織田信長も武田信玄も上杉謙信も、名前入りのハンコを使っていないんです。現代でこそ、ハンコ（印章）は自分の姓名を彫るのが当たり前となっていますが、そのようになったのは近代に入ってからなのです。江戸時代までは、好きな言葉や動物の絵柄、紋章など自由な感覚でハンコをつくるのが普通だったのです。
例えば、日本に印章の使用を広めたとされる織田信長のハンコは、龍の絵柄と共に、信長が掲げた政策「天下布武」という４文字が彫られています。また、上杉謙信は、獅子の絵に「地帝妙」（神仏の加護を表す言葉）の字を組み合わせたハンコです。謙信のライバル武田信玄は文字のない龍の絵柄だけを彫ったハンコを用いました。信玄は龍の絵柄がお気に入りだったようで、他のデザインの龍の印鑑が残されています。里見氏は角印の上部を鷲が掴んでいるかのような図柄や龍をモチーフにしたハンコを使っていたそうです。
このように戦国武将や権力者らは、名前ではなく吉語や座右の銘、動物の絵柄などを彫ったハンコを好んで使ったのです。

 

明智光秀は菱形、伊達政宗はＵＦＯっぽいハンコだった

ハンコの形も自由奔放でした。現代のように丸か四角にとらわれず、今川義元は八角形、明智光秀は菱形の印を押した古文書が残っています。幾何学的な形にさえこだわらない武将もいました。例えば、上杉景勝は香炉の形を模したり、伊達政宗は縄文土器かＵＦＯにも見える形の印が残っています。
他にも戦国武将は、動物などを代々その家の「家印」と定めて受け継いでいたという記録も残っています。歴代の北条氏の当主は印の上部に虎が寝そべった図柄の「虎印」を家印としていました（図版資料：新関欽哉「ハンコの文化史」）。

美少女キャラの印鑑を捺すために必要な条件とは？

ところが、1871年（明治4年）に明治政府が出した太政官布告によって「実印」には名前を彫ることが定義されました。実印とは自治体に印鑑登録する大切な物であることは皆さんご存じの通り。
しかし実印以外で、ハンコには名前を彫らねばならない、絵柄を彫ってはならない、と定める法律はありません。銀行で口座を開設する際の「銀行印」も絵柄入りでもＯＫです（一部の金融機関では断られる可能性もあるのでご確認ください）。町内の回覧板に捺す「認印」なら、くまモンなどの「ゆるキャラ」やアニメの美少女キャラクターを彫ったユニークなハンコでも問題ありません。

でも、職場の社内回覧にいきなり美少女キャラのハンコを捺していいものでしょうか？。（上司に怒られるんじゃないか……）って、ちょっと心配ですよね。そんなときは、勇気を出して「このハンコ、使っていいですか」って聞いてみましょう。理解のある上司なら「もちろん！」って言って貰えるかもしれません。だって、実印以外、ハンコには法律もルールもないんですから。
要は、印鑑を捺して渡す相手が「ＯＫ」って言えば、イラスト入りだろうが名前がなかろうが構わないのです。姓名を彫ったフォーマルなハンコを捺すか、あだ名やゆるキャラ入りハンコを使うかは、相手やコミュニティ内での関係性の問題なのです。
回覧板、カルチャー教室の月謝袋、子供のスポーツチームの文書、商店街のスタンプラリーなど、ゆるい関係性のコミュニティで遊び心のあるハンコを使ってみてはどうでしょう。自分のアイデンティティが表現できるだけでなく、周りのみんなも楽しい空気になりますよ。