2016.04.12

プロでも意外と知らない人もいる? レーザー加工機の知っておきたい4つの知識

勉強中

レーザー加工業者の中でも知らない人がいるかも、というレーザー加工の基礎知識を4つ紹介します。これを知ればだれかに自慢できる? かもしれません。

1、波長によって変わるレーザーの種類

レーザーの種類分けには「媒体」と「波長」という2つのカテゴリがあります。媒体で分けると、「固体レーザー」、「液体レーザー」、「ガスレーザー」、「半導体レーザー」、「自由電子レーザー」の5つ。波長で分けると、「赤外線レーザー」「可視光レーザー」「紫外線レーザー」「X線レーザー」の4つ。「媒体」や「波長」がどんな意味を持つのかという話は専門的になりすぎるので割愛しますが、オーダーグッズビジネスショップで使われるレーザー(主にCO2、YAG、YVO4)は、媒体で言うと「ガス」か「固体」の2種類、波長で言うと「赤外線」にあたります。
CO2はガスレーザー、YAGとYVO4は固体レーザーで、全て不可視光で赤外線。赤外線は波長が長く、熱を発する性質をもっています。レーザー加工機はこの熱によって彫刻や切断をおこないます。
レーザーで加工できる素材は、波長によって違う。CO2、YAGとYVO4は波長が違うので、加工可能な素材も違います。

2、CO2、YAG、ファイバーで加工できる素材

OGBS用途で一番使われているのが「CO2レーザー」。レーザー波長は10600nmの赤外光で、目では見えません。発振管内にはCO2(二酸化炭素)ガス以外に、N2(窒素)やHe(ヘリウム)が規定量配合され、完全密閉状態で封入されています。これを「封じ切りタイプ」と呼びます。ABSやアクリル、大理石、レンガ、タイル、コルク、ガラス、皮革、マットボード、ナイロン、ポリエステル、ゴム、シリコン、木材などに加工できますが、アルミニウム、真鍮、銅、鉄、チタンなどの金属加工が苦手(高出力の工業用CO2は可能)です。
ファイバーレーザーやYAGレーザーはポリエチレン、ポリカーボネート、鉄、アルミ、ニッケル、ステンレスなど樹脂や金属などに彫刻(マーキング)できます。レーザー波長は、1064nmの近赤外光。YAGとは、Y(イットリウム)、A(アルミニウム)、G(ガーネット)の略。高出力で金属の切断ができる工業用もあります。YVO4レーザーはより小さい文字や加工などの精細加工用途で使用されることが多いようです。レーザー波長は、YAGと同じ1064nm。YVO4は、Y(イットリウム)、V(バナジウム)、O4(オキサイド)または、Y(イットリウム)、VO4(バナデート)の略。金属プレート彫刻などをメインにするなら最適ですが、木材加工などには向きません。YAGレーザーはガルバノタイプ(ガルボタイプとも呼ぶ)が多く、高価な機種が多いようです。

3、知っておきたいレーザー加工機各部の名称

・レーザー発振器
レーザーが発振される、いわばレーザー加工機の心臓部です。ここから発振されたレーザーは、1次ミラー、2次ミラー、3次ミラー等に反射してヘッドに運ばれ、ヘッド部にあるレンズミラーで収束されてから加工対象物に向かって射出されます。発振器はレーザー加工機の背面に設置されているタイプ、内蔵されているタイプなど様々。使い続けていると出力が低下してくるため、交換が必要になります。使用時にカットが多いのか、彫刻が多いのかなど、レーザー発振器への負荷によってその寿命は変わってきます。
・ボディ
安心してレーザー加工できるよう、剛性が高い機種がおススメです。ボディの正面、または側面などに、レーザー加工機を制御するCPUなどが設置されています。機種によっては、ボディの前面、背面、両端をあけて長尺物を差し込めるタイプ(パススルー)もあります。
・駆動部
ヘッドをX、Y方向に動かす部分で、加工の精度を左右します。ヘッドの移動にはゴムベルトやセラミック樹脂製の駆動ベルト、ゴムのベアリングなどがあり、メーカーによって異なります。レーザー加工機の中で最も動く場所なので、定期的なメンテナンスや交換が必要です。
・テーブル
ここに加工したい素材を置いて加工します。しかし、アクリルや木などを直接置いて加工すると、加工物にチリやヤニが付着することがあるので、ハニカムテーブルを使うのが一般的。ハニカムテーブルの上に素材を乗せて彫刻すると、レーザーの抜けや煙の抜けがよくなり、素材にチリなどが付着することを防いでくれます。ハニカムテーブルはオプションで用意しているメーカーがほとんどです。
・ヘッド
レーザーの射出口。レンズミラーが内蔵されています。レーザーを射出しながらX、Yに動くことで、加工対象物を彫刻、切断します。
・エアアシスト&防塵システム
エアアシストは加工時に炎をあげないようにするのが目的。消火してくれるわけではありません。エアの流量調整も可能で、素材によっては、エアをかけた方がより綺麗に切断できるものもあります。防塵システムは、レンズミラーにチリが入りにくくするためのもの。
・赤外線レーザーポインター
位置決めのためのレーザー。赤い光点によって、これからどこを加工するのかがよくわかります。

4、ガルバノタイプ、フラットベッドタイプとは

レーザー加工機は大まかに「ガルバノ(ガルボ)タイプ」と「フラットベッドタイプ」の2つがあります。ガルバノはレーザー光が照射されるヘッドの位置が固定され、レーザー光を鏡に反射して動かします。そのため加工速度は早いですが、加工範囲が狭いのが難点。一方、フラットベッドは一般的なCO2機と同様にヘッドが動いてレーザー光を照射するため、加工範囲が広いのですが、ガルバノよりは速度が落ちます。ガルバノタイプの場合、気を付けたいのが「安全性」。ヘッドが筐体の中に収まっているCO2機と違って、ガルバノタイプはヘッドがむき出しの機種もあります。使用時は専用ボックスで覆うなど配慮しましょう。

ガルバノタイプとフラットベッドの仕組み
・ガルバノタイプの仕組み
発振器から出たレーザー光をミラーを動かし、加工対象物に当てます。ミラーの小さな動きだけでレーザー光の照射位置を動かすことができるので、高速加工が可能。ただし、加工範囲は狭いです。
・フラットベッドタイプの仕組み
ヘッドそのものをXとY方向に動かし、レーザーを対象物に照射するため、ガルバノタイプより遅いです。ただし、加工テーブルいっぱいにヘッドを動かすことができるので、複数の商材をいくつも並べて一気に加工することができます。

レーザー加工機の基礎を知りたい人は、OGBSマガジンVol38「レーザー加工機がわからん!!」をご覧ください。

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