2017.06.09

ラバーにフィルムにハイブリッド? 色々あるバキューム熱転写機

ここ数年、バキューム熱転写機がメーカー各社から次々と発売され、OGBSでも徐々に導入が進んでいます。この機械は「3Dプレス機」、「3D転写」、「真空転写」など、メーカーによって様々な名称がつけられていますが、大まかな原理は共通しています。それは、「機械内部の空気を抜いて転写紙を対象物に密着させ、熱をかけて昇華転写をおこなう」こと。本稿ではこうした機構を持つ昇華転写用の小型機を「バキューム熱転写機」と呼称して、その特徴を紹介します。

 

転写紙を密着させる「ラバー」と「フィルム」

バキューム熱転写機は素材に曲面や多少の凹凸があっても、キレイにムラなく昇華転写することができます。スマホカバーやマグカップへの転写に使っているショップが多く、スマホカバーの場合は側面まで切れ目なく絵柄をプリントできるのが大きなメリットです。
バキューム熱転写機は、「ラバータイプ」と「フィルムタイプ」の2つに大別できます。この機械は転写紙を対象物に密着させるため空気を抜きますが、その時に必要になるのが伸縮性の高い素材で、ラバータイプでは機械の付属パーツであるゴム膜(シリコン製が多いため、シリコンラバーと呼ばれることが多い)が用いられています。フィルムタイプは転写紙そのものが伸縮して素材に密着します。使用するのは「転写フィルム」と呼ばれます。

ラバータイプで使用するゴム膜は何度も使えるので経済的ですが、長く使っていると伸びたり傷んだりして転写が上手くいかなくなり、交換する必要があります。フィルムタイプは転写フィルムそのもののコストが高いが、毎回新しいものを使うので転写の品質が安定しやすいのが特徴です。

バキューム熱転写機の中には「ラバータイプ」、「フィルムタイプ」のどちらでも使える「ハイブリッドタイプ」も存在します。また、ラバータイプであっても転写紙ではなく、転写フィルムを用いる場合もあります。

 

合皮製の手帳タイプには上手く転写できない?

バキューム熱転写機はスマホカバーなど薄い素材への昇華転写に特化した機種と、マグカップや楯などある程度大きな素材に転写できるものがあります。マグカップなどに転写する場合は、ラバーやフィルムを使わず、転写紙を巻きつけてクランプで密着させてから熱をかけ、昇華転写します。この方法を使えば、マグカップだけでなく様々な商材に転写可能。ただし、全てポリエステルコーティングされたものに限ります。

現在、バキューム熱転写機で最も作られているのはスマホカバーとマグカップ。スマホカバーはこれまでPCやTPUなどの樹脂製が全盛でしたが、現在は合皮製の手帳タイプが主流になりつつあります。合皮製は革の質感を出すために細かい凹凸が型押しされているものが多く、凹が深いタイプだと底部分までしっかりと昇華転写するのが難しい。もちろん、全くできない訳ではないので、なるべく凸凹の浅い素材を選びましょう。マグカップは扱い業者が急増しているが、ニーズは拡大しているので是非取り込んでおきたいところです。

 

ポイントはRIP、デザインソフト、ケースの豊富さ

現在、OGBS向けに各種のバキューム熱転写機が発売されていますが、各メーカーには様々な特色があります。

昇華転写に必須の昇華インクプリンターとバキューム熱転写機をセットで販売しているメーカーでは、キレイに発色するよう、専用のRIPソフトが付属している場合があります。色にこだわるお客が多いなら、RIPソフト付きを選ぶとよいでしょう。

デザインソフト付きの機種もあります。自分のデザイン力に自信がない、デザインする手間が面倒、というショップ向けのモデルです。iPhone以外のスマホカバーで勝負したいと考えているショップなら、アンドロイド機のスマホカバーを豊富に揃えているメーカーを選びたい。

また、バキューム熱転写機は導入してからのスキル積み上げも必要になります。例えば、iPhone5や5sは角ばっていたので側面に転写しやすかったが、iPhone6、6sの角は丸みを帯びているので、下側まで転写紙を巻き込むことができず、上手く転写できない場合があります。それを回避するためには、カバーを少し上げて下部まで転写紙を押さえつけられるようにする、などの工夫が必要になります。

 

 

ラバータイプのバキューム転写方法

ラバータイプのバキューム熱転写機。商材をセットして転写紙を乗せ、シリコンラバーを被せてからバキュームします。転写紙を巻き込んでシリコンラバーが下に吸引されるので、スマホカバーの側面まで昇華転写することができます。

転写紙を使う場合は、角部分がキレイに転写できるよう、切込みを入れる必要があります。ラバータイプであっても転写フィルムを使う場合がありますが、フィルムタイプより小さな面積で済みます。

ラバータイプの転写方法1

ラバータイプの転写方法1。商材をセットして、転写紙を載せる。

ラバータイプの転写方法2

ラバータイプの転写方法2。シリコンラバーを被せてからバキュームする。

フィルムタイプのバキューム転写方法

フィルムタイプのバキューム熱転写機。専用の転写フィルムにプリントし、セットしたスマホカバーの上に置きます。機種によっては、フィルムにパンチで穴をあけ、それを機械にセットするタイプも。次にバキューム。転写フィルムそのものに伸縮性があるので、スマホカバーに密着します。

転写フィルムを使う場合は、側面のデザインが伸びて歪む場合があるので、それを考慮したデザインが必要になります。

フィルムタイプの転写方法1

フィルムタイプの転写方法1。専用の転写フィルムにプリントし、セットしたスマホカバーの上に置く。

フィルムタイプの転写方法2

フィルムタイプの転写方法2。そのままバキューム。転写フィルムそのものに伸縮性があるので、スマホカバーに密着する。

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