2016.02.02

オリジナルTシャツを産み出すウエアプリントの7つの製法とは2~インクジェット転写、昇華転写、ダイレクトインクジェットプリント、刺繍

ウエアプリントには様々な製法が存在します。生地の素材によってはプリントできるもの、できないものがあるので、1つの製法だけでなく、複数のプリントシステムを所有しているショップがほとんどです。現在のウエアプリント業界で一般的に利用されている製法は次の7つです。
1、シルクスクリーン印刷
2、熱圧着
3、トナー転写
4、インクジェット転写
5、昇華転写
6、ダイレクトインクジェットプリント
7、刺繍
それでは、各製法の特徴を紹介していきましょう。

耐候性、耐水性に優れ、豊かなカラー表現ができるインクジェット転写

4、インクジェット転写
インクジェット転写には、家庭用のプリンターを用いる場合と業務用の大型プリンターを用いる場合の2種類があります。ウエアプリント店が使う場合は、高品質な業務用プリンターを使ったインクジェット転写が多いようです。大型インクジェットプリンターは設置スペースもある程度必要で、設備投資も高額です。しかし、耐候性や耐水性などに優れた溶剤系のインクを使うことができるのが強みです。このプリンターはウエアプリントだけでなく、看板、サイン関連でも使われているので、ステッカー作成にも使えて汎用性に優れています。
特徴は、高品質なウエアプリントができることと、表現の豊かさ。看板&サイン向けに開発された耐候性、耐水性に優れたインクを使ってプリントできます。インクもライトシアン、ライトマゼンタをはじめホワイトインク、シルバーインクが搭載されている機種も。最近ではオレンジインク、グリーンインクも登場し、幅広い色表現が可能になりました。そのため、色にこだわりの強いスポーツマーク業界での導入が進んでいます。
大型機と表現していますが、機械サイズは幅1・5~2m前後なので、中規模ショップなら十分導入可能です。プリントだけでなく、カット機能を備えた機種もあります。ただし、設備投資は高額で、100万円を超えることも珍しくありません。転写紙は昇華ブロック、ストレッチタイプなど豊富に用意されていますが、大型機用は機械にセットできる幅(60㎝、120㎝など)のロール状(20m巻、25m巻など)で販売されている場合が多いです。

インクジェット転写

大判プリンターの様々なインクが使えるインクジェット転写

全面にプリントしたユニフォームを作りたいなら昇華転写

5、昇華転写
昇華インクと呼ばれる特殊なインクを使って、繊維そのものを染める手法です。転写紙に鏡像で絵柄をプリントし、それを生地の上に乗せて熱プレス機などで熱をかけます。昇華インクは190℃を超えると気化し、繊維の分子構造に入り込むことで色を付けます。他の製法がインクや転写紙を生地に「乗せる」のに対し、昇華転写は生地の中から「染める」ので、通気性や風合いが良く、滑らかに仕上がるのが特徴です。転写紙をカットしたりカス取りする手間がなく、工程も簡単。ただし、昇華インクはポリエステル生地しか染めることができません。また、すでに染められた濃色の生地には転写できないという問題があります。
製法上、難しいのが色合わせ。例えば一定の温度を保つプレス機を使っても、室温など作業環境によって仕上がりが異なります。また昇華インクは他のインクと比べて消費期限が短く(約6ヶ月〜1年)、古いインクは色が変化しやすいと言われています。赤が朱色に、黒が緑のように変わるため、インクの期限にも注意が必要になります。思い通りの色を出すには、経験を積むしかありません。
各種スポーツユニフォームを作るには幅の広い大型機で転写紙にプリント後、大きな生地全面に昇華転写し、型紙に沿って切り抜いてから縫製します。大型の昇華プリンターや熱プレス機、縫製設備や技術が必要になるため、小規模ショップでは手におえない場合があります。しかし、現在は東京オリンピック開催でスポーツ需要が拡大しているため、ウエアプリント業者から最も注目を集めている製法でもあります。

昇華転写

昇華転写プリンターは小型から大型まで様々。全面昇華転写したいなら大型プリンターと大型の熱プレス機が必要。

1枚、フルカラーのウエアプリントがオンデマンドで簡単にできるダイレクトインクジェットプリント

6、ダイレクトインクジェットプリント
ガーメントプリンターと呼ばれる専用機を使って、ボディに直接インクジェットプリントする手法です。オンデマンドなので、紙にプリントするような感覚で使えます。大きな面積にグラフィカルな表現ができ、縫い目の上にもプリント可能。全面昇華転写には及びませんが、かなり自由度の高いデザインが可能です。プリント速度も速いので、完全データ入稿であれば即日納品できます。機体もそれほど大きくないので、小規模ショップでも導入しやすいのが特徴です。
淡色ボディの場合は、ガーメントプリンターにボディをセットしてプリントし、熱プレス機にかけるだけ。濃色ボディは前処理剤を塗って熱プレス機にかけ、乾燥させてからガーメントプリンターにセットしてプリント、熱プレスします。濃色ボディにプリントするには、白インク搭載のガーメントプリンターが必要。淡色ボディでも発色や堅牢度を上げるために前処理剤を塗布する場合もあります。
ダイレクトインクジェットプリントの弱点は、濃色ポリ素材へのプリントが難しいことです。最終的に熱をかけてインクを定着させるため、濃色ポリだと再昇華がおこり、プリント部分をボディの染料が侵してしまう場合があります。最近では再昇華を回避するための手法や前処理剤も開発されつつあります。ダイレクトインクジェットプリントはインクを生地の表面に吹き付けているだけなので、耐擦過性が他の製法より低い場合もあります。また、前処理工程に手間がかかるので、自動塗布の機械を入れると効率がよくなり、生産力も上がります。

ダイレクトインクジェットプリント

ダイレクトインクジェットプリントにはガーメントプリンターが必要。写真はエプソンのSC-F2000。

他の製法では真似できない立体表現や高級感がある刺繍

7、刺繍
刺繍には大きく2つのカテゴリがあります。袖や胸にワンポイントで文字だけを刺繍する「ネーム刺繍」と、ジャンパーや帽子に大きな絵柄を刺繍する場合だ。昔と違って、今ではパソコン上で刺繍用のデータを作りますが、絵柄のデータを作るのは初心者には難しいでしょう。プリントと違い、刺繍は一色ずつ違う色の糸を重ねて表現します。また、一つの図柄をどの順番で縫うのか正解がありません。それらは経験に基づいてデータを作るしかなく、複雑なデザインは腕が要求されます。刺繍のデータは「パンチデータ」と呼ばれ、大きな刺繍を依頼された場合は「パンチ屋」と呼ばれる専門のデータ製作業者に任せる場合が多いようです。
一方、文字だけを刺繍する場合は簡単です。専用ソフトに刺繍専用書体を使って文字を打ち込むだけ。書体の中に文字を縫う順番まで含まれているので、難しいことを考えなくてもできます。ウエアプリントショップの場合、ネーム刺繍からはじめて通常のプリント+刺繍で単価アップを狙うのが得策と言えるでしょう。刺繍そのものは機械が自動的に行ってくれるので特別なノウハウは必要ありません。Tシャツや帽子などを固定する「枠」(フレーム)を取り付け、刺繍機にセットするだけ。あとはボタン一つで刺繍機が仕上げてくれます。この「枠」は刺繍するものの場所や形状によって付け替えなければなりません。つまり、帽子やTシャツ、袋など色んな形状に刺繍する場合は「枠」が複数必要になります。プリントでは真似できない立体感と高級感を取り入れたいなら、刺繍に挑戦してみましょう。

刺繍

立体的な表現が特徴の刺繍。金糸、銀糸などを使ってゴージャスな仕上げにすることも可能。

ウエアプリントについて詳しく知りたい方は、

OGBSマガジンVol.17「クラT攻略法」
OGBSマガジンVol.19「シルク印刷VS熱圧着」
OGBSマガジンVol25「ボディ徹底解剖」
OGBSマガジンVol.29「ウエアプリントの新常識」
OGBSマガジンVol.34「ウエアプリント33の最先端を大公開」
OGBSマガジンVol.36「おさえておきたいウエアプリント」
をご覧ください。

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