お名前つけはオーダーグッズの宝庫だった!?
子供の入園、入学準備で持ち物に名前をつける……という行為は今に始まったことではありません。その必要性を考えれば、学校の様な集団生活の場が誕生した昔から行われていたはずです。
しかしそれが「お名前つけ」と呼ばれ、関連商材を売るビジネスとして確立したのは1990年代後半からです。その頃から、幼稚園や小学校が子供の持ち物に記名することをルール化され、同時にインターネット通販とオンデマンドプリントの技術が発達。「お名前シール」などの関連商品を販売する環境が整ったことで、ニッチながらもジワジワとビジネスのカテゴリとして根を生やしてきました。大手スタンプメーカーのシヤチハタ㈱も2003年に「おなまえスタンプ」を発売。以降、セルフインカータイプやディズニーキャラクターを取り入れたラインナップを増強し、数年で同社のお名前つけ関連商品の売上げは1億円に達したそうです。
3つの事情がママを悩ませる
オジサン目線で見れば「子供の名前ぐらい油性ペンで書けばいい」と思うでしょうが、現代のママ達にとって「お名前つけ」は、お金を払ってでも楽をしたい大変な作業なのです。
その理由はまず第1に、「記名すべきアイテムが多種多数」という事情があること。具体的に、小学校の入学準備で名前をつける持ち物を挙げてみましょう。体操服、通学帽、上履き、給食袋、教科書、筆記具、絵の具セット、リコーダーやカスタネットなどの楽器。さらに、足し算や引き算などを学ぶ教材「算数セット」を使う小学校では、セットの中身の計算カード、数え棒、おはじき、図形の色板といった教材1点1点にまで名前をつけなくてはなりません。それらを含めると記名すべきアイテム数は300~500点に上ります(学校によっては、個人情報保護の観点から登下校時に身に着ける物などへの記名を控える場合もあります)。
第2に「ママ達には時間が無い」。朝食の支度から掃除、洗濯、子供が寝るまで育児に追われ、旦那が帰宅すれば風呂、夕飯、後片付け……結局、家族が寝静まってから夜なべしてお名前つけをするママは珍しくありません。体操服や算数セットなどが入学説明会や入学式、つまり入学直前ギリギリまで手に入らないことも、彼女達をてんてこ舞いさせます。共働きのワーキングママや双子のママ、同年に兄が小学校で弟が保育園……ともなれば、その忙しさはさらに増大。実際、世のママ達の8割近くが入園・入学前の準備で「持ち物へのお名前つけが大変」と感じています(グラフ参照)。
そして3つ目の事情、ママ達は「キレイにやりたい」のです。どれほど忙しく面倒くさくても、油性ペンで殴り書きは嫌。キレイな字で、可愛いイラスト入りで、お名前つけがしたい……そんなママ達の矛盾するニーズが、お名前つけビジネスを成立させています。
欲しいのは商品じゃなくてお名前つけ
これからお名前つけビジネスを始めたいOGBSは、こういった背景を理解した上で取り組んで欲しい。逆の見方をすれば、ママ達を取り巻くこれらの状況は、そのままお名前つけビジネスの要点だと言えます。
まず第1の事情「記名すべきアイテムが多種多数」に対応するには、売る側もそれぞれに適した多彩なお名前つけ商品をラインナップしなければならなりません。お名前つけの対象となるアイテムは様々な素材でできており、しかもその数や使用環境によっても最適なお名前つけの方法が異なります。例えば、体操服などの布製品にはシールよりもアイロンプリントで熱圧着するのが適しているが、教科書などの紙製品は熱圧着よりもシールが適任。ただし、同じ紙製品でも保育園に毎日持参するおむつのように使い捨て用途へのお名前つけにはスタンプが経済的です。
注文を分散する「これさえあればセット」
それらをトータルで提供できるラインナップや売場作りを意識しなければ上手くいきません。ウエアプリントショップだからといって熱圧着のアイロンプリントしか扱っていなかったり、印章店がお名前スタンプだけの売場を作るといった、自社の得意分野にお名前つけという要素をトッピングしただけでは上手くいきません。ママ達は、お名前つけの必要に迫られているのであって、アイロンプリントやお名前スタンプといった単体の商品を求めているのではないことに注意しましょう。
第2の「時間が無い」という事情には、スピーディーな納期で対応すべきでしょう。とはいえ、急ぎの仕事が短期間に集中するのは好ましくありません。そこで需要期に突入する前に、一般的なお名前つけニーズが満たせる「これさえあれば大丈夫」セットを提案しましょう。現実店舗であれば、前年の購入者からの情報を蓄積しておいて「○○小学校用入学準備セット」を作る方法も。商圏内の幼稚園、小学校の実名を挙げることでネット通販との差別化に繋がるし、ママ達も安心して事前注文できるでしょう。
最後の「キレイにやりたい」という心情が理解できていれば、安値よりも見栄えを訴える売り方をすべき。フォントやシールのデザイン、キャラクターがチョイスできるような魅力的な売り方にもこだわりたいところです。
一方で「お名前つけは瞬間的に忙しいだけ」と、食わず嫌いするOGBSもあるでしょう。確かに、需要の原泉が入園、入学であるため、春先に注文が集中する傾向は否めません。ただし、その時期にしか注文が無いかと言えばそうではありません。近年、新たな攻め口が2つ見つかっています。
1つ目は「ギフト」。お名前つけ用の商材はギフト需要が少なくありません。お名前つけグッズの販売に成功しているショップを取材すると、「自分の子供用に購入したお客が翌年は甥や姪、知り合いの子供などにプレゼントするケースが珍しくない」そうです。祖父母が孫へランドセルをプレゼントする時期は、入学前年のゴールデンウイークから始まりお盆休みにピークを迎えます。お名前つけグッズも、ギフト用なら同様の時期に販促を仕掛ければ春先の需要を分散させることができます。
学童向けの販路に行き詰まったら「お年寄り」
2つ目の攻め口は「介護」です。お名前つけが求められるのは学童に限りません。介護が必要なシルバー層や入院患者も施設内で自分の衣類やタオル、食器などに記名が求められます。そのような大人向けのお名前つけ需要を上手く探し当てれば、一年を通じて販売できる商材と言えるでしょう。
ママ向け、介護向け、いずれにしてもOGBSにとって接点の少ない需要層と繋がりを持てるのがお名前つけグッズ。BtoBや学生向けの販路で行き詰まりを感じているなら、新たな需要層の開拓に挑戦してみてはどうでしょう。
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