お名前つけグッズの製法と特徴~アイロンプリント・刺繍・彫刻・箔押し編
お名前つけグッズには様々な製法があります。前回の記事ではスタンプとシールを使ったお名前付け方法を解説しました。今回の記事は、「アイロンプリント」、「刺繍」、「彫刻」、「箔押し」の4手法によるお名前つけ方法を紹介します。
布へのお名前つけが得意なアイロンプリント
ウエアプリントでおなじみの熱圧着用のラバーシートに店が名入れ加工(プリントやカッティング)をおこない、それをシートのまま販売。購入客が自宅で家庭用アイロンを使ってお名前つけをおこなう方式です。体操服や靴下、ハンカチ、給食袋など布製品に名前つけをおこないます。ウエアプリントで使う素材だけに洗濯耐久性は折り紙つき。プリンタブルのラバーシートにプリンターで印刷すれば色制限がなくグラデーションや写真、細かい柄、線なども表現可能です。一方、家庭用のアイロンで熱をかけるためプラスチックやビニールなどの素材には使用できません。
OGBSがシートを販売する場合、プリンターやカッティングプロッターなどの製造システムがあれば内製は可能。名前の版下を面付けしたデータを機械に流すだけです。設備を持たない店は、アイロンプリントの専門業者に外注し、取次販売に徹しましょう。業者を選ぶ際は濃色・単色に対応しているか、転写シートの洗濯堅牢度が高いかなど、シートを取り寄せて品質をチェックしましょう。
付加価値という点では、アイロンシールの「フロッキータイプ」は独特な風合いがあって面白いでしょう。アイロンをかけてシールを冷ました後、剥離シートを剥がすとふっくらと立体感のある仕上がりになります。洗濯耐久性も高く、凹凸のある生地にも貼れるので、お勧めのグッズです。
ハサミでシートを切り離す場合、四隅に丸みをつけてカットするとより長持ちします。
他にも、エンドユーザーにアドバイスしておきたい注意点としては、靴下にアイロンプリントする場合です。足首の伸縮部分にプリントすると、伸びに対してシートがついていかず、ひび割れることがあります。この場合は足首ではなく足裏に貼りましょう。その際、靴下の網目と平行に貼ることでシートが長持ちします。
またアイロンプリントした上からアイロンをかける場合、直接あてるとシートが剥がれる恐れがあります。専用の保護シートを上に敷いてアイロンをかけるように説明しましょう。
長所…………布へのお名前つけに特化し、グラデーションや細かい絵柄も布素材に再現できる。プリンター、カッティングプロッターなどの手持ちの設備を使って内製できる。
短所…………アイロンなどで熱プレスするため、プラスチックやビニール製の持ち物にはお名前つけできない。スタンプなど他の製法と組み合わせるのが一般的。タオルのような凹凸のある素材、伸縮性の高い布地にも不向きな場合がある。
対応素材…………布
立体的で高級感のある仕上がり「刺繍」によるお名前つけ
針と糸で布地に文字や図形を表現する手法。表現のほとんどが平面のプリントや転写と違い、刺繍は立体で高級感があります。消費者の感覚としても、ネームラベルを貼るより刺繍の方が高価だと感じているでしょう。
刺繍は、直接布に縫い付ける方法が一般的だが、その場合お客から商品を預かるか、刺繍済みの商品を販売するスタイルとなり、ニーズは少なくなります。そこでワッペンに文字を縫って販売、お客が家庭のアイロンで接着する方法を取り入れましょう。ワッペンの他にゼッケンや布地の名札などもあります。
布地のお名前つけ用品は数多くあります。制服や帽子、体操服、ハンカチ、給食袋、水着……など。市販のバッグを特に水に濡れる布製の持ち物に名前を入れる場合、刺繍は耐久性が高いので、お名前つけの方法としておすすめ。
刺繍機やミシンを使えば内製できるとはいえ、「何となく難しそう」と苦手意識を持つ人は少なくないでしょう。しかし最近は機械が進化し、初心者でも操作がしやすくなっています。刺繍データを作る「パンチング」の作業も、専用ソフトにより、画像やイラストなどの刺繍データを一括変換することが可能です。ソフトによっては子供が描いたイラストをそのまま取り込んでデータ化することもできます。初心者はまずネーム刺繍から取り組んでみてはどうでしょうか。慣れてきたら絵文字やイラスト、画像などの刺繍にチャレンジして腕を磨きましょう。
気を付けたいのが、小文字や複雑なデザインだと刺繍の再現が難しいことです。小さな持ち物に縫う場合や、スペースが限られる場合は注意しましょう。特にイラストを入れる場合、複雑なものだと糸が潰れたりすることもあります。注文を請ける際は、十分な名入れスペースがあるかお客に確認しましょう。
長所…………糸を使って立体的な表現ができるので、高級感を出したいという場合に適している。ワッペンを利用することで、より幅広いデザイン表現が可能になる。
短所…………布以外の素材には利用できない。細かい文字やデザインなどを表現する場合、糸でデザインが潰れてしまうことがある。十分な名入れスペースがあるか確認しておこう。商品を預かるか、商品ごとの販売をしなければならない(ワッペンにして売る方法もある)。
対応素材…………布
木製品や金属製品への名入れは「彫刻」が向いている
刃物で対象物に名前を刻む加工法。直接名前を刻むので文字が消える心配がなく、高級感があります。彫刻後に色入れを施せば、見栄えもアップ。付加価値の高いお名前つけが提供できます。
対象となる持ち物は鉛筆などの木製品、ハサミ、ハーモニカ、スプーン等の金属系、リコーダーなどのプラスチック製品。リュックサックやカバンに取り付けるネームタグやキーホルダー、入学祝いのギフト用途ではボールペンへの名入れ彫刻にも利用できます。
彫刻機の基本的な加工方法は「彫刻」「罫書き」「打刻」の3つだが、単純に名前を入れるなら「罫書き」がおすすめ。針を対象物に押し当ててから動かし、傷をつけることで文字や絵柄を表現できます。マーキングに近く深彫りできませんが、加工時間が短いため即納できます。ノウハウも比較的簡単なので、初心者も取り組みやすいでしょう。
写真やイラストを入れるなら「打刻」。対象物に打ち付け、素材に「点」をつけて絵柄や文字を描き出す加工で、濃淡のある絵柄も再現できます。深い凹凸を付けたいなら「彫刻」。素材によってどんな数値設定をするか、経験とノウハウが必要になってきますが、極めれば、より高付加価値のお名前つけグッズを作ることができます。
彫刻機は罫書き&打刻、彫刻&罫書き、といった複数加工に対応したモデルが多いが、それぞれに得意分野があるので、扱いたい商材を想定して最適な機械を選びましょう。また刃物や素材を固定する口金などの周辺道具も機械選びの大きなポイントです。
付加価値という点では、アイロンシールの「フロッキータイプ」は独特な風合いがあって面白い。アイロンをかけてシールを冷ました後、剥離シートを剥がすとふっくらと立体感のある仕上がりになります。単なるシール加工に満足できない、洗濯耐久性も高く、凹凸のある生地にも貼れるので、お勧めのグッズです。
長所…………対象物に文字を刻むため、高級感のあるお名前つけができる。文字が消える心配もないので付加価値を高められる
短所…………金属や木などお名前つけできる素材が限られる。商品を預かるか、彫刻済み商品を販売するスタイルになる。
対応素材…………木・金属・プラスチック
「箔押し」できるのは鉛筆だけじゃない!
箔押しとは、熱と圧力で金や銀、色箔の文字や絵柄を圧着する印刷加工のこと。箔の裏面には接着剤が施されており、版からの熱で接着剤を活性化させ、材料に箔を転写するという仕組み。メタリックな光沢を表現できるので、普通の印刷よりも仕上がりが目立ち、高級感を与えられます。
もともと箔押しは熟練の技術が求められ、版を作った後も箔が均等に美しく載るための「ムラ取り」作業が必要。加工する素材や面積で作業時間が変わり、場合によっては半日以上も時間を費やすこともあります。
しかし現在は手動・自動タイプの箔押し機や型が不要のオンデマンド機が登場し、初心者でも加工が可能となりました。自動タイプは手動式に比べると、本体サイズが大きく価格も割高だが、均一した仕上がりが得られます。一方、手動だと時間がかかり、体力的にも疲れます。また同じ力で押し続けるのが困難で、仕上がりにムラが出ることも。
コンピュータータイプのオンデマンド機は、活字や金型を使わずにパソコン上でレイアウトされた文字を直接熱転写するシステム。職人技の金文字が誰にでも再現できるので扱いやすい。
箔押しの対象素材は木、プラスチックなど。お名前つけグッズのカテゴリで見ると、鉛筆やクリアファイルに箔押しで名入れするニーズがあります。箔の付加価値を利用すれば、お祝い用のギフトとしても売りこめるでしょう。
長所…………金・銀など色箔を転写する方法で、他にはない独特な表現が可能に。高級感のある仕上がりが得られ、彫刻と同様、付加価値アップに役立つ。
短所…………熱転写のため使用できる素材が限定される。活字タイプだと金型代がかかり、費用が割高に。コンピューター式のオンデマンド機なら金型作製が不要。
対応素材…………木・プラスチック
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