2016.11.04

名字の専門家、印章店なら知っておきたい名前のルーツ

文字の専門である印章店にとって「名字」は切っても切れない関係。名字に詳しい印章人も多いと思いますが、その成り立ちまで説明できる人は少ないのでは?
30万種あるといわれる日本の名字(同じ漢字で異なる読み方がある場合も1カウント)。その膨大な数の中には「鈴木」や「佐藤」などの代表姓があります。武光誠著の「名字と日本人」(文春新書)で、それぞれの代表姓のルーツを見てみましょう。

「鈴木」は稲の収穫がルーツ

 

稲穂 すすき

◇鈴木……もともとは「すすき」。すすきとは秋に稲を収穫して田に積んでおく有り様を指す言葉でしたが、そこから派生して山積みの稲の中に立てる1本の棒(竹)や稲穂を積んだものを「すすき」と呼ぶようになりました。また稲穂を積んだ有り様を「穂積」とも呼ぶようになり、熊野大社の神官である穂積氏の名字はこの単語から来ています。
穂積氏は中世に「穂積」が主に「すすき」と呼ばれるようになると「鈴木」を名字にしました。そして熊野大社の分社をまつるようになった武士は、自分の名字を鈴木に改め、支配下の農民に自分と同じ名字を与えたといいます。
現在もその名残りで、「鈴木」は熊野大社の末社の分布が濃い東海・関東地方に多いそうです。

日本人に一番多い? 「佐藤」の由来

◇佐藤……藤原秀郷の子孫にあたる藤原系の武士が名乗ったのがはじまりです。秀郷の五代目の子孫にあたる藤原公清、公脩の兄弟が、祖先の秀郷が下野国佐野庄の領主であったことにちなみ、「佐野」の「佐」と「藤原」の「藤」を合わせた「佐藤」を名字にしました。秀郷の流れをひく佐藤家の武士達は主に東北地方に根を張って成長。その名残りから現在も「佐藤」は東北に集中しています。

 

 

その他、全国に多い名字の由来

◇伊藤……藤原秀郷の子孫にあたる基景が伊勢国に勢力を張ったために、「伊勢の藤原」を略した「伊藤」を名字にしました。

◇田中……「田中」とは1つの農村が作られた時に、その中心部分を表すためにできた地名。人々が新たに土地を開いて集落を作った時に、そこの有力者が村落の中心部分に住んで「田中」と名乗りました。そして、その名字が次第に中流以上の農民の間に広まっていったのです。「田中」は「鈴木」や「佐藤」が広まらなかった近畿地方から北九州にかけての地域に比較的多いようです。

◇山本・小林……「山」や「林」は、村落を守る神社が作られた神聖な場所を表しています。集落の指導者で、代々神社のそばに住んでまつりをおこなっていた家が「山本」や「小林」の名字を名乗りました。これと同様に、「山下」「森本」「森下」「宮本」「小森」「小山」などの名字もそれと似たルーツを持っています。

◇高橋……地名をもとに広まった名字。古代人は天地を結ぶ梯子や柱があると考えていました。つまり神々が下りてくる神聖な土地には目に見えない高い梯子や柱が立っており、それを「たかはし」と呼んだのです。そこから派生して、神聖な土地のことを「高橋」と名付けるようになり、そこの周辺に住む人々が、天から下りてくる神の御利益を得ようとして、「高橋」の名字を持つようになりました。

このように名字の多くは武家や地名が起源となっています。お客さんの中に「鈴木」さんや「佐藤」さんがいたら、名字のルーツを教えてあげましょう。

 

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