2020.03.11

見逃せないご祝儀袋用の印鑑「慶弔印」の需要

IT全盛の今でも、確固たる地位を築いているハンコがあります。それが、ご祝儀袋や香典袋などに捺すためのスタンプ「慶弔印」です。より詳しく言えば、のし袋に捺すためのゴム印や浸透印(シヤチハタタイプのスタンプのこと)を、まとめて「慶弔印」と呼んでいます。ハンコ屋さんにとっては昔からある、馴染み深い商品ですが、消費者には意外と知られていない、便利ハンコ商品なのです。

慶弔印には表書き印、氏名印、金額印がある

慶弔印の特徴は、男女、世代を問わず必要とされる商品であることです。
一昔前なら、年輩の方は筆に慣れているので表書きに苦労はありませんでした。しかし近年では、どの世代であっても、筆に対する苦手意識を持つ方は多くなっているでしょう。特に若い世代では筆離れが進んでいるので、のし袋を購入する際、あらかじめ表書きが印刷されたものを選ぶ例が増えています。

「のし袋にあらかじめ刷ってあるものを買うなら、慶弔印は不要じゃないの?」と思うかもしれませんが、のし袋には必ず自分の名前や社名、中包みには金額を筆で書く必要があります。その部分にも慶弔印が役に立ってくれるんです。

つまり慶弔印とは、「御祝」、「御香典」などのし書き部分の「表書き印」、自分や会社の名前の「氏名印」、金額を表す「金額印」、さらにそれらを捺印するための「スタンプ台」の4アイテムがセットになったもの、もしくはこの中の1部をセットにした商品なんです。

様々な内容の慶弔印がセットになった慶弔印セットも販売されています。

様々な内容の慶弔印がセットになった慶弔印セットも販売されています。

ビジネス用の慶弔印と家庭用慶弔印は何が違う?

さらに慶弔印には、家庭用とビジネス用の2種類があります。
家庭用の場合、表書き印は「御祝」「御霊前」の2つあればほとんどカバーできます。これに氏名印、金額印、黒と薄墨のスタンプ台があれば十分です。付け加えるなら、表書き印に「御見舞」を加えるといいでしょう。

「御歳暮」や「御中元」、「粗供養」、「満中陰志」、子供が産まれたら「内祝」が必要な場面もあるかもしれませんが、家庭用の場合、百貨店や葬儀業者などが全て手配してくれるので、それらの出番は少ないと言えます。

中小企業は揃える慶弔印が多い?

一方、ビジネス用は様々なスタンプが必要になります。

大企業なら慶事、弔事は業者が手配する例もありますが、それでも必ず必要なのが弔事用の表書きスタンプ。ビジネス用であれば「御霊前」だけでなく、「御仏前」、「御玉串料」、「御花料」など揃えておいたほうがベターです。
中小企業の場合、全て自社で用意する例も多いので、「御歳暮」、「御中元」をはじめ、「粗品」、「御見舞」、「寸志」、「御餞別」、「御年賀」まで必要になります。印章店で販売するなら、家庭用、ビジネス用を2種類用意して、それぞれに「フルセット」と「簡易版」を用意するといいかもしれません。ビジネス用なら、セット内容を3〜5段階に分けて提案するのもいいでしょう。

慶弔印は「眠れる市場」

厚生労働省が発表した令和元年(2019年)の人口動態統計の年間推計によると、出生数が91万8400人、死亡数が136万2470人、婚姻件数が58万3000組。これを合計すると、286万3870回も慶弔事があることになる。しかも、慶弔印を利用するのはこの回数×関係者数となるので、その数は膨大になります。

もちろん、この数は理想値。しかし、印章店の努力次第で理想を現実に変えることも不可能ではありません。というのも、消費者は果たして「慶弔印」の存在を知っているのだろうか? という疑問があるからです。

ハンコ業界の人間にとって慶弔印は当たり前の存在ですが、慶弔印を前面に出して販売している印章店はあまりみかけたことがありません。せいぜいのし袋と筆ペン、氏名印などがひとまとめに置かれているだけで、存分にPRできているとは言い難いのが現状です。お客が知らない商品が売れる訳がない。慶弔印市場は、印章店がPRを続けることで作り上げることができる「眠った」市場と言えます。

そこで挑戦したいのが、「慶弔印」のコーナーを設けること。小さなワゴンでもいいから、「表書き印」、「氏名印」、「金額印」とスタンプ台を揃えたり、すでにセットになっている商品を導入して設置してはどうでしょう? さらにわかりやすいように、のし袋もいくつか置いて、のし書きの豆知識のPOPなどを付けておくといいかもしれません。

これだけで消費者は「今まで筆で書いていたけど、スタンプという手段があったのか」と気が付くはずです。さらに拡大したいなら、最近増えたカラフルな祝儀袋などを揃えてボリューム陳列することで、お客の目を引きやすくなるはずです。「のし書きの書き方」など、消費者が持ち帰れる小冊子やチラシを用意すると、慶弔印だけでなく、店全体のPRにも繋がります。また、最近では慶弔印商材自体も便利なものが増えてきたので、それらの最新商材を提案してお客を取り込んでいきたいですね。

 

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