2017.06.26

スタンプ台要らずの セルフインカーって何?

セルフインカーの内部構造

セルフインカーの内部構造

セルフインカーというハンコをご存知ですか。ホルダーの機械的な仕組みによって連続捺印するスタンプで、自動印、オートスタンパーとも呼ばれています。

ゴム印が中で180°グルリと回る

セルフインカーは握り部分のホルダーに印面とインクパッドが内蔵されています。印面はホルダーの上部を向いて収納されており、未使用時は印面とインクパッドが接するようになっています。捺印時にホルダーを手で押し下げる動作によって印面が内部で180度回転して紙に接する…これがスタンプ台を使わずに連続捺印できる仕組みです。インクが切れたらパッドを交換するか、パッドにインクをつぎ足せばよいので、捺印回数が多いヘビーユーザーに好んで使われている製品です。ネーム印タイプ、データータイプなど種類も豊富にあります。
ゴム印につきものの「背見出し」部分は、シールや紙に捺印またはプリンターで印字してホルダーにセットするタイプが多く、通常のゴム印より作業が簡単なのも特徴です。近年はカラフルでおしゃれなデザインや抗菌、リサイクル素材などのホルダーラインナップが増えた他、前面に加飾プレートが装着できるタイプも発売されています。

欧米ではシヤチハタ式よりセルフインカー

販売する側の印章店にとってもセルフインカーはメリットがあります。それは通常のゴム印より簡単な作業で連続捺印タイプのスタンプが内製できること。スタンプ台要らずで連続捺印できるスタンプといえば、一般的にシヤチハタ式と呼ばれる「浸透印」が日本では主流ですが、浸透印を内製するには専用の設備が必要です。一方、セルフインカーの場合は、赤ゴムや樹脂印の印面を貼りつけるだけで作製できます。そのため浸透印よりも安価で、納期が早いのも特長です。また浸透印は、インクを注入してから印面に浸透するまで時間がかかります。セルフインカーの場合はその時間が要らないため、ホルダーに印面を貼ればすぐに納品できます。収益面でも、浸透印を外注するより利益率が高いケースが多く、販売店とお客の双方にとってメリットの高い商品です。実は、欧米では浸透印よりセルフインカーの方が主流なんです。

台湾製とメイドインジャパンの違いは?

日本国内では㈱スタンテック、㈱トヨダ商事・㈱豊田商会、富士印材工業㈱といった企業がセルフインカーの販売をおこなっています。

㈱スタンテックは台湾の総合スタンプメーカー「三勝文具社」が展開するブランド「シャイニー」の製品を取り扱う日本の総代理店です。
シャイニーのセルフインカー「PRINTER LINE」は1999年の登場以来、約200万個以上(OEM商品を除く)の累計出荷数を誇ります。そのロングセラー商品を日本仕様にアレンジしたのが「NEW PRINTER LINE」。海外向けのホルダーでは正面手前向きに付けていた背見出しを、上方に変更しています。ホルダーサイズは5種類用意され、カラーは黒、白、青、赤の4色。正面のプレートも付け替えが可能。無地のプレートも販売されており、名入れ加工を施したり、イラストや写真をプリントしてホルダーに取り付けることがでます。オーダーメイドを求める雑貨店や飲食店、個人客などにお勧めです。

シャイニーの「NEW PRINTER LINE

シャイニーの「NEW PRINTER LINE」。上方の見やすや捺しやすさなど機能を一新している

ゴム印メーカーの㈱トヨダ商事・㈱豊田商会が販売しているのが「スーパーセルフインカー ジョインティ」です。ホルダーはネーム印タイプのJ9シリーズとSSI10シリーズ。そのほか丸印シリーズ、角印シリーズ、住所印シリーズがあり、それぞれ複数のサイズが用意されています。
「ジョインティ」の特長は他社のセルフインカーにはない独自の機能が備わっていることです。それはネーム印タイプに備わっている「ロータリー式インキパッド」という機能。普通のセルフインカーは印面とインクパッドが常に同じ場所が接しているためインクパッドにへこみができてしまうことがあります。パッドがへこむとインクが印面につきにくく、印影が鮮明に写りにくくなります。「ロータリー式インキパッド」は捺印するごとにインクパッドが、回転することで印面を接する位置を変え、パッドをへこみにくくしています。
その他、ネーム印タイプと住所印タイプともに両面にインクパッドがついた「ダブルパッド」を採用。片面だけで3000回、両面合わせて6000回の捺印が可能です。

「ジョインティJ9シリーズ」

㈱トヨダ商事・㈱豊田商会の「ジョインティJ9シリーズ」

山梨県の印材問屋、富士印材工業㈱が販売している「スキナスタンプ」は低価格のセルフインカーです。通常の台木並の価格で、ゴム印の連続捺印を可能とします。両側面にある赤いボタンを同時に押すと、ゴム印を貼る回転部分を2箇所でロック可能。スタンプパッドの着脱やゴム印の貼り付けを簡単におこなうことができます。背見出しも着脱簡単で、紙をセットするだけ。不慣れなユーザーでも簡単に扱えます。2010年に長角型、丸型、角型など3タイプが20種類が発売しました。価格だけでなく機能やホルダーのラインナップも充実した製品です。

富士印材工業のスキナスタンプ

富士印材工業のスキナスタンプ

セルフインカー、ハンコの豆知識について詳しく知りたい方は、月刊 現代印章 増刊号 知らないと恥ずかしいハンコ屋の常識をご覧ください。

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